本記事をご覧いただいたということは、開業届のメリットを知らない、提出先がわからない、そもそも開業届自体何かよくわからない、ということだと思います。開業届は出したほうがいい!と聞くけど、何がいいの?というのはよくある質問です。
今回はそういった、これからフリーランスになろう、もしくはフリーランスだけど仕組みを良く知らないという方向けに開業届のメリットと提出方法、注意点を解説していきたいと思います。

開業届とは何か、メリットは?

個人として事業を始める為にはまず開業届を出すイメージがあると思いますが、実際には開業届を必ず出さなければいけないというわけではありません。ではなぜ独立したら開業届を出す方が多いかというと、受けられる制度や、納める税金に関してメリットがあるからです。
まず開業届とは、「個人として事業を営み、その分で得た売上と所得に見合った税金を納めます」と税務署にお知らせするものとなります。開業届を出すことによって、税務署から「個人事業主」と認識され、税金に関する案内や確定申告書などが届くようになります。
提出時期は事業を開始した日から一か月以内とされていますが、「事業を開始した日」の厳密な定めはないので、クライアントと契約を交わした日、などご自身の認識で判断していただければと思います。
また、開業届を提出することによって得られるメリットとして大きく3点あります。 

青色申告ができる

開業届を出すことによって、青色申告での確定申告が可能になります。確定申告には、青色申告と白色申告の二種類があり、青色申告で行うと特別控除を受けられるため、税金面の負担を軽くすることができます。この青色申告を行うための承認を得るには、開業届と「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

青色申告することによって納める税金を所得から最大65万円控除することができますが、この2種類の書類を提出しないと、白色申告のみで確定申告を行うこととなるので、税金面でとても大きな負担となってしまいます。

また、青色申告を行うことによって、赤字になっても3年間繰り越しすることができるので、黒字の年に赤字を繰り越すことで、課税対象をマイナスにできるというメリットがあります。確定申告については便利ツールを紹介しているので気になる方はあわせてご覧ください。

※2020年(令和2年)分の確定申告以降e-taxによる申告、または電子帳簿保存を行うと引き続き65万の特別控除となります。また、基礎控除が38万から48万に増額されるため、e-taxを利用していると10万の控除額アップとなります。

しかし、e-taxによる申告、または電子帳簿保存を行わない場合は特別控除額が55万となるので、注意が必要です。なお、青色申告承認申請書の提出期限は開業から2か月以内となっています。(年初に開業の場合は3月15日)

開業届と一緒に提出しておけば、税務署に足を運ぶ手間も減りますので、一緒に作成しておくことをお勧めします。

屋号付き口座が開設できる

屋号というのは会社に付ける名前のようなもので、個人事業主の事業名となります。屋号を設定することで、屋号名で口座が開設できるので、ビジネス用として口座管理が可能です。確定申告するときや、経理系のITツールもこちらの口座と連携すればスムーズに処理ができます。
また、屋号を付けることで「事業」と意識付けができるうえ、クライアントからも覚えてもらいやすく、きちんと「事業」として運営をしているという印象をもたれるというメリットがあります。 ご自身の、モチベーションにも繋がるかもしれません。
必ず屋号を決めなければいけないということではありませんが、あったほうが便利かも?と思う方は、是非活用してみてください。

小規模企業共済制度に加入できる

小規模企業共済制度とは、小規模の企業の経営者や、個人事業主のための積立による退職金制度となります。

開業届を提出すると、こちらの小規模企業共済制度に加入することができます。小規模企業共済制度では、毎月の掛け金を支払うことでお金を積み立てることができます。掛金は1,000円~70,000円までの範囲(500円単位)で自由に選択でき、全額所得控除の対象になるため、税金対策にもなるというメリットがあります。加入後の掛金増減も可能です。

また、小規模企業共済制度に加入することにより、下記の貸付制度を利用することができます。事業資金の調達や、不足の事態が起こった時に低金利で利用ができる便利な制度となります。

・一般貸付制度

・緊急経営安定貸付

・傷病災害時貸付

・福祉対応貸付

・創業転業事・新規事業展開等貸付

・事業継承貸付

・廃業準備貸付

共済金には満期・満額はなく、廃業時に受けとれます。一括・分割、または併用も可能となり、一括の場合は退職所得、分割の場合は公的年金の雑所得となるため、税金の節約もできるのです。ただし、納付した月数が240か月(20年)未満で途中解約する場合は掛金を下回ってしまい元本割れする可能性もあるので、注意しましょう。20年以上は加入をする必要があるため、将来のことを十分に考えて検討する必要があります。

開業届には2種類ある

「開業届」と一般的に言われておりますが、正式に提出する書類は「個人事業の開業・廃業等届出書」と「個人事業開始等申告書」の2種類があります。この2種類の書類は提出先が異なっており、「個人事業の開業・廃業等届出書」は税務署に、「個人事業開始等申告書」は各都道府県に提出するものとなります。というのも、税金の区分として、所得税、消費税は「国税」となるので税務署、個人事業税は「地方税」として納める先が異なります。同じような内容の書類を異なる提出先に出すのは少し面倒ですが、手続き上必要なことなので、2種類提出することを忘れないようにしましょう。

開業届を出す際の注意点3つ

開業届もメリットばかりではなりません。申請する際には注意事項もあります。特に気を付けたい3つをご紹介いたします。

国民健康保険に加入をしよう

これまで会社で勤めていた方は会社の厚生年金保険、雇用保険、健康保険から脱退していることになるので、個人として新たに国民健康保険への加入が必要です。なお、会社員時代に加入していた健康保険を2年間継続することも可能ですがその場合は会社と折半していた保険料が全て自己負担となります。
また、国民年金についてもご自身で手続きしていただく必要があります。
個人事業主の方が加入できる年金については国民年金のみとなるので、将来受け取る金額を上乗せしたい!という方は付加年金制度や国民年金基金制度、個人型の確定拠出年金なども検討しておくといいでしょう。

クレジットカードの申請、ローンも開業申請前に組もう

独立直後にクレジットカードや、ローンを組もうとしても審査が厳しく通りにくい状況になると思います。クレジットカードやローンの審査基準は安定して収入があるのか、というところなので、実績がないと状態だと審査を通るのは難しいでしょう。フリーランスとして開業後でも審査通過は不可能ではありませんが、、クレジットカードやローンをすぐに必要と考えている場合にはフリーランスとして働く前に手続きを済ませておきましょう。

申請前に失業保険のチェック

失業保険とは、会社の倒産や自己都合退職によって失業した場合新たに就職先を見つけるまでの間お金を支給してくれる制度です。こちらの手当支給の条件は「失業後、再就職の為に求職活動をして1年以上の雇用保険加入歴がある」ということです。開業届を提出した時点で既に個人事業主として業務を開始している状態になっているので、会社を退職したからといって失業保険の申請は出来ません。
ただし、再就職手当については一定の条件をクリアできれば受給資格があるので、開業届を出す前にハローワークに相談することをお勧めします。

開業届の書き方・提出方法

開業届を提出するのに費用はかかりません。開業届の用紙は税務署に取りに行くか、国税庁のウェブサイトからダウンロードができます。

[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続 参照:国税庁HP

開業届の書き方

  1. 開業届に〇付け
  2. 所轄の税務署名、書類提出日を記入
  3. 自宅or事務所の住所、氏名、生年月日、職業、屋号、マイナンバーを記入、名前の横に押印
  4. 開業部分に〇付け
  5. 開業日を記入
  6. 「青色申告承認申請書」を提出する場合は有に〇
  7. 消費税に関する「課税事業者選択届出所」を提出する場合は有に〇(通常は無)
  8. 事業内容を記載
  9. 従業員がいて、給与を支払う場合は記入

提出方法

提出先はご自身の納税地を所轄する税務署となります。

受付時間は平日の8時30分から17時までとなりますが、土日祝または受付時間外の際は税務署の時外収受箱に投函し、提出が可能です。この場合の受領日は投函した日となります。

また、郵送での提出も可能です。郵送の場合は受領日が「郵便局が発送した日」となります。提出期限まで日付がぎりぎりとなってしまった場合や、時間がなく税務署にいけない方にはこちらをおすすめします。

なお、開業届を提出する際は自分用の控えの作成もわすれないようにしましょう。提出の際に「文書収受」の押印をもらって保管しておくことで、開業したことや開業日付の証明として利用することができます。今後、クレジットカードの審査をするときや、金融機関の融資など利用したい場合に対外的な証明書として活用が可能です。

郵送での提出の際は控えの返却をしてもらう用の封筒と切手の同封を忘れないようにしましょう。

提出期限については事業を開始した日から一か月以内となります。

※提出期限が土日祝の場合はその翌日。

まとめ

独立後、はやく仕事をもらって働きたい!という気持ちもあると思いますが、業務に取り掛かる前に、フリーランスとして働く体制を作らなければいけません。さまざまな手続きが必要なため、少し面倒と感じることが多いかもしれませんが、開業届や青色申告承認申請書を提出することで得られるメリットはとても大きいです。後々困らないためにもあらかじめ準備はしっかりと進めておきましょう。
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