PoCとは何か簡単に解説｜ビジネスでの活用事例も紹介

インターネットの普及により世界中の情報が瞬時に共有される現代。

ビジネスにおいても新たなアイデアや技術が次々と生まれ、市場競争は複雑化しています。

その中で、新しいアイデアや技術の実現可能性を的確に評価し、リスクを最小化するための重要な手法として「PoC（Proof of Concept）」が注目を集めています。

しかし、PoCの意味とそのビジネス上の重要性を具体的に理解している方は少ないかもしれません。

本記事では、PoCの概念と重要性をビジネス成功の具体的な事例と共に深く掘り下げていきます。

現代ビジネスで不可欠なPoCの概念、その価値、そして成功事例を詳細に解説し、ビジネス戦略に貢献するための情報となれば幸いです。

PoCとは実現可能性を検証するための手法

POCとは”Proof of Concept”の略で、直訳すると「概念の証明」という意味になります。

これは、新しいアイデアや理論、システム、製品等が提供される前に、その可能性や有用性を実証するための初期的な実験やテストのことを指します。

例えば、新しい技術や製品が提案された場合、そのアイデアが実現可能であるか、または提案された解決策が問題を解決できるかどうかを確認するためにPoCを用いることで、潜在的なリスクを最小限に抑えられるでしょう。

具体的には、制約条件下での機能確認、性能評価、市場反応の試験などを行います。

PoCは、新しいアイデアや技術を商業的な製品にするまでのプロセスで非常に重要なステップであり、大きな投資をする前にリスクを評価し、製品の実現可能性を検証するための手法なのです。

PoCがビジネスにもたらす影響は大きい

PoCはビジネスにおいて多くの利点をもたらします。

具体的には以下のような影響を与える可能性があります。

リスク管理

PoCは製品、サービス、またはシステムの実現可能性を評価するだけでなく、それが企業のビジネス目標や要件に適合するかどうかを確認します。

さらには、新しい技術やアプローチが業界の規制や標準に準拠しているかどうかを判断するための重要なプロセスでもあります。

これにより、法的な問題やコンプライアンスの問題が後から発生するリスクを避けることができます。

コストの削減

PoCは初期段階で小規模なテストを行うことにより、製品やシステムの開発に伴うプロジェクトコストの予測や、予算に影響する課題の洗い出しが可能です。

これにより、大規模な開発が始まる前に予算計画を見直すことや、既知の問題を解決することで、結果として全体的な開発コストを削減することができます。

技術評価

新技術が提供する潜在的な利点は数多くありますが、それがすべてのビジネスにとって必ずしも有効であるとは限りません。

その技術が特定のビジネス環境や問題解決に適しているかどうかを明らかにするためには、PoCが重要です。

新たに導入を考えている技術の性能をテストすることで、その技術が期待通りに機能するか、またはビジネスに必要な基準を満たすかどうかを確認します。

市場検証

PoCは製品やサービスを提供する前に、市場の反応を評価する把握するための手段としても用いられることがあります。

ターゲットとする顧客層に対して製品やサービスを提供し、その反応を観察します。

これにより、市場のニーズと期待を分析し、反応や評価に応じて、大々的に公開する前に製品やサービスを調整することが可能となります。

利害関係者への信頼性の向上

PoCは新しいアイデアやプロジェクトの有効性を示すためのエビデンスとして活用することもできます。

これにより、投資家やステークホルダーに対して、新しい計画が実行可能であることを示し、資金調達や決裁といった場面で信頼を得るのに役立ちます。

以上のように、PoCはビジネスにおける意思決定のサポートや、製品やサービス開発の効率化、リスクヘッジなど影響は大きいと言えるでしょう。

国内外のPoCの具体的な成功事例

続いて、PoCを導入した国内外の有名な企業の成功事例を見ていきましょう。

勤務シフト自動作成 | 日立製作所、KDDI、KDDIエボルバ

日立製作所、KDDI、およびKDDIエボルバは2022年6月に、量子コンピューティング技術を使用した勤務シフト自動作成のPoCを実施しました。

このPoCでは、QUBO（二値の二次式で表される最適化問題）を用いてKDDIエボルバのコンタクトセンターのスタッフシフトを表現し、イジングマシン（組み合せ最適化問題を解くための技術）を用いて計算するというものです。

従前のシフト作成には、スタッフの契約条件や勤務条件、時間帯ごとの必要人員数など、複雑な条件を満たす必要があり、従来は多くの時間を要していましたが、このPoCの結果、シフト作成時間を半分以上短縮でき、さらに9割以上のスタッフがシフトの自動作成に肯定的な回答を示しました。

車間距離自動制御および自動操舵制御 | ソフトバンク、Wireless City Planning

2020年2月、ソフトバンクとWireless City Planning（WCP）は、5Gの新無線方式（5G-NR）を活用した車両間通信により、新東名高速道路でトラック隊列走行のPoCを実施しました。

このPoCでは、隊列走行に必要なリアルタイム制御情報の共有と、安全確認のための大容量動画像の後続車両から先頭車両へのリアルタイム伝送に、5Gの高信頼・低遅延を活用するもので、先頭車両が有人運転、後続車両が自動運転で先頭車両を追従し、目標車間距離10mで後続車両の自動運転（車間距離自動制御および自動操舵制御）を行います。

その結果、試験区間（約20km）を時速約80kmで走行する3台のトラック間で、位置情報や速度情報、操舵情報などを共有し、CACC（協調型車間距離維持制御）に加えて、リアルタイムで後続車両の自動操舵制御の実施に成功しました。