2021年のIT業界バズワードといえば、トータル・エクスペリエンス(TX)でしょう。
トータル・エクスペリエンス(TX)はガートナー社が2020年に発表した【「企業や組織が2021年に調査する必要がある」9つの主要な戦略的テクノロジートレンド】に記載されている1つのトレンドとして提唱された戦略・概念です。
さて、本記事ではトータル・エクスペリエンス(TX)を理解しやすいように、できるだけかみ砕いてご説明し、読者様にTXの理解を深めて頂きたいと考えています。
将来的に、または今、フリーランスITコンサルタントとして活躍していきたい方はもちろん、自社を大きくしていきたいベンチャー・中小事業主の方にもこの機会にご一読いただきたい内容になっています。
トータル・エクスペリエンス(TX)とは
ガートナー社は “TXは、マルチエクスペリエンス(MX)を、カスタマー・エクスペリエンス(CX)、従業員エクスペリエンス(EX)、ユーザー・エクスペリエンス(UX)と結び付ける戦略”と定義しています。
はて、、、このUX・CX・EX・MXを皆さんはご存知でしょうか?どうやらTXを理解する前に、ガートナー社の定義するこの4つのキーワードを理解しなくてはいけないようです。
UXはユーザー・エクスペリエンスの略称ですが、聞いたことがある方も多いと思います。
まずはこれら4つの概念を説明していきます。
ユーザー・エクスペリエンス(UX)
UXとは、ユーザーが1つのサービス(または製品など)を通じて得られる体験を指しています。
現代はモノが良くてニーズを見つけても売れるとは限りません。テクノロジーが変化し情報がいつでもどこでも手に入る現代では、差別化が難しくなっているからです。だから、そのサービスを通じて得られる「体験」をユーザーは重視しており、企業側はUXに力を入れることが大切なのです。
ちなみUXは必ずしもWebやアプリなどのIT関連に限った話ではありません。
例えば、スターバックスコーヒーでは、「日常で手に届く少しリッチな時間」を体験として提供するように店舗が設計されています。このように私たちを囲むあらゆるものに対してUXを創造できるのが特徴です。
カスタマー・エクスペリエンス(CX)
CXはユーザーが1つのサービス(または製品など)を通じて得られる“全体“の体験のことを指します。UXとCXは混同されがちですが、CXとは、UXが積み重なった体験と捉えるとわかりやすいと思います。
1つの商品を購入するとき、お客さんが感じる体験は1つではないはずです。
例えば、飲食店で考えてみましょう。
ハンバーグ定食を食べる前に「入店」「着席」「接客」「注文」といった複数のプロセスを踏まなければいけません。それぞれのプロセスでユーザーはその体験に価値を感じます。
いくらハンバーグ定食がおいしくても、入店しづらく、接客もひどかったら総合的な体験としては良いといえるでしょうか。
この複数のUXを改善することでCXも向上し、顧客満足度があがって、結果的にレストランの売上は伸びていくことになります。
エンプロイー・エクスペリエンス(EX)
EXとは、従業員の経験(職場内で経験できるすべての要素)を指しています。2015年ころにUXやCXの派生としてトレンドキーワードとしてHR系の雑誌・メディアに取り上げられました。
EXを高める施策として、例えば従業員のサーベイ(アンケート)があげられます。
従業員の満足度や意識を調査することで、従業員が抱えている問題を早く察知し解決を促し、良い意味でのびのびと業務にあたってもらえるでしょう。
UX・CXだけを重視した偏った経営方針ではなく、社内にも目を向けることが重要だと考える経営者が増えた時代変革の象徴ともいえる概念でしょう。
マルチ・エクスペリエンス(MX)
MXは通常現実では経験できないような体験を得られることを指します。
「バーチャルフィッテイング」の試着シミュレーションサービスなどが良い例だと思います。今までは、服は実際に着て自分に似合っているかお店で判断していましたが、この「バーチャルフィッテイング」はお店で着なくても、自分に似合っているか専用液晶があれば確認できます。コロナ禍の感染抑制としても有効な次世代型のサービスと言えるでしょう。
つまりは、デジタル・Web・モバイルといったIT技術を駆使して、より豊かで快適な日常生活を送ることですね。
TXは革新的な成功の鍵
今後3年間で、TXを提供する組織は競合他社を上回る主要な満足度評価指標を達成するとガートナーは予測しています。
大手企業でも、TXをおざなりにすれば時代にのれないよと、大げさに言えばそうゆうことです。
もちろん、CXを高める為に従業員に無理をさせればEXは悪いといえます。
特にCOVID-19の影響で、そういった状況は顕著にみられてきているのかもしれません。
全てのユーザー・従業員にとって良い体験を生み出すことがTX戦略で、あらゆる面でWin-Winの関係築く設計をすればすべてがリンクし他社に差をつけられるということでしょう。
まとめ
固く難しい言葉がたくさん出てきますが、すべて身近にある話です。結局は、「顧客・従業員ともにいい関係・体験の築けるビジネスモデルが他社に差をつけるよ」というのを難しい言葉で表しているだけのことですね。
大きくなってしまった大手企業は多種多様な事業を展開していることから、TX改革に莫大な費用と長い時間をかけなければいけません。
反対に、日本のほとんどの企業は中小ですから、このTX改革は大手企業を取って食う戦略だといえます。まずは身近なところから設計し直すことで、企業成長を加速できるかもしれませんね。