オンラインクリニックやオンライン手術など、デジタル技術は医療業界にも大きな革新をもたらしていますが、その中でも我々の生活で特に注目されているのが、DTx(Digital Therapeutics|デジタルセラピューティクス)です。

この記事ではDTxの定義、導入の背景、またDTxのメリット・デメリット、実際に使われているDTxアプリの紹介、また、DTxの未来についても解説していきます。

DTx(デジタルセラピューティクス)とは何か

DTx(デジタルセラピューティクス)は、デジタル技術を活用して疾患の予防や管理、治療を行う新たな医療の形です。
具体的には、スマートフォンやウェアラブルデバイスを用いて、患者自身が自分の健康状態を把握し、必要に応じて医療専門家と連携を取ることが可能になります。

この技術は、特に慢性疾患の管理において有効で、日々の生活習慣の改善や薬物療法の補助として利用されています。
また、リアルタイムでの健康情報の収集と分析により、個々の患者に最適化された治療を提供することも可能になります。

DTxが導入された背景

DTx(デジタルセラピューティクス)は、日本では「治療用アプリ」とも呼ばれ、医師の管理下で処方されるもので、厳しい審査を経たものばかりです。

日本でDTxが導入された背景として、2014年に旧薬事法の改正で薬機法が制定され、ソフトウェアも医療機器として規制対象になりました。

その後、2017年にはデジタルへルス分野の業界団体「Digital Therapeutics Alliance」が設立され、DTxが提唱されました。

これにより、医療費の高騰や医療サービスの適正化を目指す中で、DTxの普及が進んでいます。

アメリカではFDAが40以上のDTxプロダクトを承認しており、世界的にも注目されています。

例として、糖尿病患者向けの「BlueStar」や喘息・COPD患者向けの「Propeller」などがあります。

日本でも2020年以降、DTxの承認が続いており、禁煙支援アプリ「CureApp SC」などが国内で注目されています。DTxは医療現場に受け入れられるかどうかは課題ですが、今後の普及が期待されています。

DTxのメリット

1. 治療の「空白」を埋められる

DTxは患者の日々の状態をデータとして収集できるため、医師のフォローアップを支援します。

非接触・短時間での診療が可能で、医療従事者の負担軽減にも期待されています。

2. 医療上の多様なニーズに対応できる

DTxはがん患者のQOL改善やうつ病のケア、偏頭痛など、多様な疾患に対応できます。

生活習慣病などにも併用することで効果が高まると期待されています。

3. 開発費・医療費を削減できる

DTxは従来の医薬品を補完・代替するものとしても提供しやすく、実用化後の治療費も抑えやすい特徴があります。

DTxのデメリット

1. ITリテラシーの要求

DTxはスマートフォンやタブレット端末を活用するため、患者側にITスキルが求められます。

アプリの操作に関して、一部の患者は操作に苦労する可能性があります。

2. 物理的なハードル

DTxは従来の医薬品とは異なり、スマホアプリなどのデジタルツールを使用します。

そのため、患者側でスマホを用意する必要があり、これがハードルになることがあります。

3. 医師の懸念

医師はDTxを処方する際、通常の治療法との比較や患者の適切な利用を検討します。

医師に対してもメリットが得られない場合、DTxの受け入れ度や効果に対する懸念があります。

4. 市場普及の課題

DTxの普及は医療現場においても課題です。医師・患者ともに低い認知度があり、市場形成に時間がかかる可能性があります。

国内外のDTxアプリ

以下に、国内外のDTxアプリの代表的な事例を紹介します。

アメリカのDTx代表事例

BlueStar: 米 WellDoc 社が糖尿病患者向けに開発したデジタル治療アプリで、2010年に米国食品医薬局 (FDA)から医療機器として承認を受けた世界初のDTxです。

Butterfly iQ: 米 Butterfly Network 社が開発したポータブル型全身超音波スキャナです。

日本のDTx代表事例

CureApp SC: 株式会社CureAppがニコチン依存症患者を対象に開発したデジタル治療アプリで、厚生労働省から医療機器として承認を受けた国内初のDTxです。

これらのアプリは、患者の行動やデータを用いることで、新たな治療・診断・予防などの手段として期待されています。

しかし、DTxは患者がアプリを操作しなければならず、人によっては大きなハードルになる可能性があります。そのため、医療従事者はアプリやシステムの使い方を正しく理解し、患者に伝える手間と責任が生じます。

DTxの未来

DTxの未来は、医療業界にとっても大きな期待が寄せられています。以下に、その主な展望をいくつか挙げてみます。

個別化された治療

DTxは、個々の患者の健康状態や生活習慣に合わせて最適化された治療を提供する可能性があります。これにより、患者一人ひとりに最適な治療法を提供することが可能になります。

リアルタイムの健康管理

DTxは、リアルタイムでの健康情報の収集と分析を可能にします。これにより、病状の進行を早期に把握し、適切な対策を講じることが可能になります。

アクセスの平等化

DTxは、地域や経済状況に関係なく、誰でも高品質な医療サービスを受けられるようにする可能性があります。これは、医療のアクセス性を大幅に向上させ、健康格差の解消に寄与する可能性があります。

コスト削減

DTxは、医療費の削減にも寄与する可能性があります。患者が自身の健康状態を管理することで、不必要な医療サービスの利用を減らし、医療費を削減することが期待されます。

まとめ

デジタル技術が医療を変える時代、DTx(デジタルセラピューティクス)はその最前線に立っています。DTxは、個々の患者に最適化された治療を提供し、リアルタイムでの健康情報の収集と分析を可能にし、医療のアクセス性を大幅に向上させ、医療費を削減することが期待されています。

しかし、その一方で、ITリテラシーの要求、プライバシーの保護やデータセキュリティ、規制の問題など、解決すべき課題も存在します。これらの課題を克服することで、DTxは真の可能性を発揮し、我々の健康管理を一新することでしょう。

デジタルが医療を変え、スマホ一つで健康管理が可能になる時代。DTxの進化とその可能性に、これからも注目していきましょう。この記事が、DTxの理解とその可能性についての理解を深める一助となれば幸いです。

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