近年ではインターネットやスマートフォンのイノベーションにより、社会は大きく変化しており、AIやIoT技術の登場によって情報化が加速し、私たちの生活は今後さらに変わると予想されます。
この変化の中で、多様性の理解や他者の視点を持つことが重要となり、科学技術だけでなく、人文科学や社会科学の知見も必要とされています。
このような背景から、人間がストレスなく情報技術の恩恵を受けられる状態を追求する動きが見られます。
しかし、現在の情報通信システムは、データ量の急増やネットワークの複雑化、消費電力の増加などの課題に直面しており、特にIoTの進展によるデバイスの増加やデータセンタの電力消費は大きな問題となっています。
これらの課題を解決するための取り組みとして「IOWN構想」が提唱されています。
IOWN構想とは
IOWN(アイオン)構想は、Innovative Optical and Wireless Networkの略で、現実とデジタル世界が融合するSociety 5.0の実現に向けて、最先端の光技術を活用したネットワーク基盤構想による新しいインフラの改革を目指すものです。
具体的には、ネットワークインフラでは実現できない新しい世界や豊かな社会を実現するための革新的な取り組みで、この構想は、NTTが発明した「光電融合技術」を中心に、大容量、低遅延、低消費電力のネットワーク基盤・情報処理基盤の構築を目指しています。
現在のインフラが未来社会の要求に応えられなくなることを予見し、それを超える新しい技術やシステムを研究・開発するため、NTT、ソニー、インテルなどが中心となって、2030年の実現を目指しています。
IOWN構想の3つの技術分野
IOWN構想は以下の3つの技術分野によって構成されています。
オールフォトニクス・ネットワーク
オールフォトニクス・ネットワーク(APN)は、光技術を中心に、通信の電力効率、伝送容量、遅延の大幅な改善を目指す技術です。具体的には、電力効率を100倍、伝送容量を125倍、遅延を200分の1にすることを目標としています。
核心技術として「光電融合技術」があり、これはコンピュータチップ内の配線に光通信技術を導入し、高速演算を可能にするものです。
基盤となるのは「フォトニック結晶」で、この技術の進化により、光を効率的に取り扱うことができ、未来の通信はより高速かつ効率的になることが期待されています。
デジタルツインコンピューティング
デジタルツインコンピューティング(DTC)は、物理的な対象(人やモノ)の仮想表現を活用する活動のことです。
DTCには3つの主要な要素があります。1つ目は活動を行う「人」、例えば自分自身や自動車メーカーなどの主体。2つ目はデジタルツインの「対象」、これは人やモノを指し、人の場合、それが自分自身か他者かの違いがあります。
3つ目はデジタルツインの「管理者」で、対象のデータやソフトウェアを作成・管理する役割を持ちます。
デジタルツインは単なるデータだけでなく、そのデータを活用するシステムとしても存在します。
例として、人の基本情報やバイタルデータ、町の3D地図や人の流れなどがデータとしてのデジタルツインになり、これにインタラクション機能を持たせたものがシステムとしてのデジタルツインです。この技術を用いると、現実の問題解決や未来の予測など、多岐にわたる活動が可能となります。
コグニティブ・ファウンデーション
コグニティブ・ファウンデーション(CF)は、クラウドやネットワークサービス、そしてユーザのICTリソースの最適化や管理を一元的に行う構想です。
従来、ICTリソースはアプリケーションごとに分散されていたため、その管理や最適化は複
雑でした。しかし、CF構想により、これらのリソースを効率的に一元管理し、完全自動化・自律化、さらには自己進化することが目指されています。
この構想の中心には「マルチオーケストレータ」というキーテクノロジーがあり、さまざまなICTリソースの最適化や配備を一元的に行います。このオーケストレータは、オーケストレーション、マネジメント、インテリジェントの3つの機能群から成り立っており、これによりICTリソースの自律運用が可能となります。
CF構想は、スマートシティやスマートファクトリーなど、さまざまな分野での実現が期待されています。
IOWN構想で何が変わるのか
IOWN構想は光技術によって未来のネットワークインフラを作る取り組みですが、具体的に私たちの暮らしがどのように変わるのか、より身近な視点で解説します。
タブレットやスマートフォンの充電を気にしなくてよい
超低消費電力技術や無線給電技術によって、小型の電子機器の使用時間を長延化することができます。
超低消費電力技術
超低消費電力技術とは、電子デバイスやシステムが動作する際に必要とする電力を極限まで低減させるための技術で、バッテリー駆動のデバイスの動作時間を延ばす、電力コストを削減するなど様々な利点があります。
例えば、スマートフォンやパソコンなど毎日使用するデバイスは、バッテリーの持ち時間を長くするために、超低消費電力技術が活用できます。
無線給電技術
無線給電技術は、ケーブルなしで電気を供給する技術で、日本が実用化に向けて進めており、総務省は2021年度内に特定の電波帯域を無線給電に割り当てる予定です。
この技術は、スマートフォンや電気自動車の充電など、多くのデバイスの充電をケーブルなしで可能にするもので、無線給電技術の普及により、日常生活がより便利になることが期待されます。
動画やゲームのダウンロードが一瞬で終わる
NTTでは2030年頃の実用化を目標に、第6世代移動通信システム(6G)の取り組みが進められています。
6Gは5Gを大きく上回る性能を持ち、通信エリアの拡大によって、陸、海、空、さらには宇宙に至るまでの全域での通信が可能となり、データ送信容量も現在の125倍に向上します。
そのため、これまで時間が掛かっていた大容量のデータのダウンロードやアップロードが一瞬で終わり、リアルタイム性が求められる手術用ロボットの遠隔操作なども実用化できるとされています。
また、1平方kmあたりで1,000万デバイスの同時接続ができるため、インターネット回線がフリーとなり、多くのデバイスが繋がる未来社会の基盤として期待されています。
まとめ
2023年3月にはIOWN1.0として、APN(オールフォトニクス・ネットワーク)サービスがリリースされ、NECと富士通、光ネットワーク機器大手の米Ciena(シエナ)の3社が、APN対応の光伝送装置サービスを展開すると発表しました。
このサービスはエンド・ツー・エンドで光の波長を専有し、中間にルーターなどの機器が不要なため、従来の200分の1の超低遅延を実現し、遠隔医療やeスポーツ、データセンター間の接続などに活用できます。
特に、医療機器メーカーのメディカロイドとの共同デモでは、手術用ロボットを使った遠隔手術の実演が行われ、約120km離れた場所からの操作でも遅延は1ミリ秒以内に抑えられたということです。
今後のIOWN構想の進展により、私たちの生活やビジネス、医療などのさまざまな分野での革新が期待され、より快適で便利な未来が期待できるでしょう。
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