平均課税制度、という制度をご存知でしょうか?あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、フリーランスとして働くうえで、絶対に知っておくべき、とても重要な制度となります。フリーランスという働き方は、頑張った分だけ収入があがるという魅力的な面もある一方、働けなくなったり、少し業務量を減らしたりとするととたんに収入が下がるというシビアな面もあります。このように収入の増減が激しいと、税金面での対策が必要となります。

平均課税制度を知らないままでいると、今後フリーランスとして活動していく中で、損をしてしまう場面が出てきてしまうかもしれません。

今回は、平均課税とは何なのか?知っていることでどう役立てるのか?など、フリーランスの方にとって必要な制度の仕組みを解説していきます。

平均課税制度とは

平均課税制度とは、収入変動が大きい方に対する税金緩和制度のことです。
会社員として働いていれば、毎年の収入が急激に変化することはあまりないでしょう。しかしフリーランスの場合は景気や案件への参画具合によって、収入の増減があります。毎年の所得を安定させるのが難しいというのも、フリーランスの特徴です。
そこで問題になってくるのが、毎年の所得税の金額です。所得税は前年の所得をもとに算出する税金なので、一時的に収入が大幅にあがった場合、翌年の税金が膨れ上がってしまう可能性がでてきます。日本の所得税の税率は超過累進税率といって、通常は所得が多くなれば多くなるほど税率もあがるという仕組みになっているため、収入が少なくなった翌年の税率がとても高くなる、というあまり喜ばしくない事態になってしまいます。
このような収入の増減が激しく、税負担が多くなってしまう問題の対策として、平均課税制度があります。

超過累進課税率の基本的な仕組み

日本の所得税の税率は超過累進課税が適用されていると先ほど記載いたしましたが、この超過累進課税がどのようなものか先に説明いたします。
平均課税を適用した場合の税金額との比較にもなるので、覚えておくようにしましょう。
そもそも累進課税制度とは所得の多い人には税金も多く、所得の少ない人には税金は少なくしよう、という制度になります。その中でも、超過累進課税というと、課税標準が一定の額を超えた場合、その超えた金額に対して高い税率を適用する、という仕組みです。
具体的に収入のうちどの金額に税率にかかるかというと、下記のようになります。

  • 収入 ― 必要経費 = 所得
  • 所得 ― 所得控除 = 課税対象所得金額

この課税対象所得金額によって、かける税率が異なります。
税率は5%~45%までの7段階に分けられています。下記は基準所得税額を算出するための速算表になります。単純に超過累進課税制度の税金を算出する場合は、以下の速算表と式を使いましょう。

  • 課税所得金額 × 税率 - 控除額 = 基準所得税額

(表1)

課税対象所得金額税率控除額
195万円以下5%0 円
195万円超 330万円以下10%97,500円
330万円超 659万円以下20%427,500円
695万円超 900万円以下23%636,000円
900万円超 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,729,000円
(出典)国税局 給与所得者と税_所得税額の計算 より

平均課税制度を使用しない場合の税金額の算出方法についてご説明しました。後ほど比較する場面もでてくるので、確認しておきましょう。

適用条件

平均課税を利用するには、条件が2つあります。

条件① 所得が変動所得か、臨時所得であること

平均課税制度の対象となる所得は2種類あります。変動所得と臨時所得とされるものです。

平均課税制度を利用するにあたり、変動所得か臨時所得か、どちらかである必要があります。

変動所得の金額:
事業所得や雑所得のうち、漁獲やのりの採取による取得、はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠、真珠貝の養殖による所得、印税や原稿料、作曲量による所得をいいます。

臨時所得の金額:
事業所得や不動産所得、雑所得のうち、次の所得やこれらに類する所得をいいます。

  • 土地や家屋などの不動産、借地権や耕作権などを不動産の上に存する権利、船舶、航空機、採石権、鉱業権、漁業権、特許権、実用新案権などを3年以上の期間他人に使用させることにより、一時に受ける権利金や頭金などで、その金額がその契約による使用料の2年分以上であるものの所得
    ※借地権や地役権を設定して土地を長期間使用させたり、借地県のある土地を長期間使用させることにより受ける権利金や頭金などの所得には、臨時所得ではなく壌土所得になるものがあります。(中略)
  • 公共事業の施工などに伴い事業を休業や転業、廃業することにより、3年以上の期間分の事業所得などの補償として受ける保証金の所得
  • 鉱害その他の災害により事業などに使用している資産について損害を受けたことにより、3年以上の期間分の事業の所得などの補償として受ける補償金の所得

(出典)国税局 よくある質問_臨時所得とは より


フリーランスの所得は一般的に変動所得に区分されるものとなります。つまりは、自然現象やその他の理由において、所得の変動が大幅に増減する金額を変動所得としているのです。ただし、上記に当てはまっている変動所得であれど、実際に変動がない場合は平均課税の対象にはならないので注意しましょう。上記に加え、本年度所得が前年と前々年の平均を超えている場合に、変動所得として認められます。

条件② 変動所得・臨時所得の合計について

  • 過去2年間変動所得があり、その合計額の1/2の金額が本年の変動所得の金額以上の方⇒変動所得額がその年の総所得金額の20%以上であること
  • 過去2年間変動所得がなかった方や、過去2年間で変動所得があったが合計額の1/2が本年の変動所得の金額に満たない方⇒変動所得と臨時所得の金額の合計が本年の総所得金額の20%以上であること

上記2つの条件を満たした場合、平均課税制度を利用することができます。
ひとくちに変動所得といっても、個人の状況によって条件のパターンが異なる為、わからない場合は税理士などに相談することも検討しましょう。

納税額の計算方法

平均課税制度を利用した場合、どれくらい税金の負担が軽くなるのでしょうか。実際の計算を行おうとするととても複雑になるので、大まかな考え方のみご紹介させていただきます。簡単に考えると、平均課税制度を適用した税額は以下になります。

変動所得と臨時所得の20%の金額に対して、超過累進税の税率をかけた後、その金額を5倍にする

【平均課税の対象金額(=変動所得)が1000万の場合】

平均課税適用なし:
所得税率=33% 控除額=153.6万円 ※表1より
1000万×税率33%-控除額153.6万=176.4万円
               税額 1,764,000円

平均課税適用あり:
平均課税対象金額×20% 1000万円×20%=200万
所得税率=10% 控除額=9.75万 ※表1より
(200万×10%-控除額)×5=51.25万円
               税額 512,500円

【平均課税の対象金額(=変動所得)が500万だった場合】

平均課税適用なし:
所得税=20% 控除額=42.75万円 ※表1より
500万円×税率20%-控除額42.75万円=57.25万円
               税額 572,500円

平均課税適用あり:
平均課税対象金額×20% 500万円×20%=100万
所得税率=5% 控除額=0円 ※表1より
(100万×税率5%-控除額0円)×5=25万円
               税額 250,000円

このように平均課税制度を利用するとしないでは、税額が大きく変わります。
上記の計算式はとても簡単に考えられたものなので、どれくらい変わるのか、目安として計算してみるといいかもしれません。

経費について

平均課税を適用する際、経費について注意が必要となります。
事業所得や雑所得のうち、変動所得とそれ以外の所得がある場合は、それぞれ変動所得に対する部分とそれ以外の部分で区分して計算しなければいけません。

それぞれに対する部分の金額区別ができない場合は、その必要経費の種類や性質に応じて、収入金額の従事割合、使用割合など適切な基準をもって按分します。

この区分が複雑化する場合もあるので、あらかじめ平均課税の対象となる経費については区別しておくことが大切です。
また、青色申告を行う場合は、青色申告特別控除額について、変動所得や臨時所得とそれ以外の所得との比により、按分計算をする必要があります。

手続き方法

平均課税制度を適用するとなると、手続きが必要となります。
確定申告を行う際に一緒に「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」という申請書を税務署へ提出しましょう。指定の申請書は国税局のホームページからダウンロードできます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/pdf/011.pdf

また、書き方の見本についても国税局のHPにて「変動所得・臨時所得の説明書」の見本がございます。あわせて確認しておきましょう。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/pdf/011.pdf

こちらで申告を行わないと、適用がされないので申告は忘れずに行いましょう。

まとめ

今回は平均課税の仕組みについてご説明いたしました。フリーランスという働き方は、収入が一定ではないため、このように税金の負担が増える場面がでてくるかもしれません。
平均課税という制度を知っているのと知らないのでは、いざという時の対応も異なります。 本記事では大まかな説明や計算方法をご紹介致しました。初めて制度を利用するとなった場合、実際の計算は複雑でもあるので、税理士に相談してみるのもいいでしょう。