ノーコード/ローコード開発をご存知でしょうか。プログラミングを必要としない開発手段として、近年よく耳にすることも多いでしょう。

市場自体は2011年から動き出していて、日本の企業でいうと、一番乗りにこのノーコード/ローコード開発に乗り出したのがサイボウズ社の「Kintone」となります。

今や様々な分野でノーコード/ローコード開発を利用したサービスが作られていますが、このノーコード/ローコード開発が広がっていくにつれ、IT業界ではどのような影響があるのでしょうか。

今回は、ノーコード/ローコード開発とは何か、また発展していくことによっておこるエンジニアの需要の変化を解説していきます。

ノーコード/ローコード開発って何?

ノーコード開発とローコード開発は一色単にされがちですが、厳密にいうと意味合いは少し変わります。

ノーコード開発とは、プログラミング言語を用いたソースコードを書くことなく、アプリを開発することをいいます。

開発画面はわかりやすいビジュアルで設計されており、アプリに必要な動きをドロップ&ドロップで視覚的・直感的に組み立てることができます。

また、ローコード開発はノーコード開発のようにまったくソースコードを使わないということではありませんが、最小限のソースコードを用いることでソフトウェアやアプリの作成を可能にする開発方法です。

ノーコード開発だけでは補えなかったり、独自のロジックを足したいという場合はローコード開発が用いられることが多いです。

ノーコード/ローコード開発の需要

今やスマホアプリや業務アプリ、WEBサイト、ECサイトなど、それぞれに特化したツールがサービスとして提供されはじめており、ノーコード/ローコード開発は大きく需要を伸ばしています。

ガートナー社は2024年までにアプリケーション開発の65%をローコード開発で行うことになると推測しています。 

参考: Low-Code Is the Future – OutSystems Named a Leader in the 2019 Gartner Magic Quadrant for Enterprise Low-Code Application – Bloomberg

ではなぜこのノーコード/ローコード開発が急速に広まっているかというと、以下の理由があげられます。

導入の手間がかからない

アプリ開発にプログラミング知識が不要であることから、ITに特化した部署でなくても導入が可能となります。これにより、わざわざ外注をしなくても現場の人が自分たちに必要なシステムを組み立てることができ、社内システムを内製化できるというメリットがあります。

開発の引継ぎ簡易化

開発の引継ぎがあった場合、前任者のソースコードを読み解くことから始めることとなりますが、ノーコード/ローコード開発は複雑なコードが不要のため、その手間がかかりません。

また、開発者のスキルに依存しないので、いざ開発者が抜けた時に内容がブラックボックス化しないというメリットもあります。

開発スピードがあがる

現在の主流であるウォーターフォール型の開発だと、要件定義~テストまで、すべての工程に多く時間を割く必要がありますが、ノーコード/ローコード開発を取り入れるとプログラミングの手間はもちろん、コーディングミスによるバグの修正にかける時間が減りますので、開発スピードが格段にあがります。

多くの人が「作る未来」 エンジニアに求められていることとは

このノーコード/ローコード開発は今後もどんどん需要を伸ばして広がっていくと考えられています。プログラミングをする必要がなく、システムの内製化が進むという事は、エンジニアにとって喜ばしいことなのでしょうか?

システムの内製化を容易にするということは、Slerにとっても脅威と感じるように思われます。

ノーコード/ローコード開発が発展することにより、エンジニアはシステムを利用するユーザーを重視するか、システムの中身であるコードを重視するかで二極化されると推測されます。

まず、ユーザーを重視してシステム開発を行うエンジニアにとっては、ノーコード/ローコード開発は強い味方になると考えられます。

ノーコード/ローコード開発を取り入れることで、よりスピーディーに開発を進めることができ、コーディングミスやバグ修正に時間を取られない分、他のビジネスプロセスやUI設計に時間をかけることもできます。

ノーコード/ローコード開発はエンジニアの仕事を奪ってしまうのではないか?と危惧する考えもあるかとは思いますが、むしろ積極的に取り入れていくことで、よりスムーズな開発ができると考えられます。

一方、プログラミングを重視するエンジニアにとっては、ノーコード/ローコード開発の発展はコーディングが不要とされるという話なのであまり面白くないかもしれません。

ただ、今後コーディングがまったく必要がなくなるということはないと推測されます。

ノーコード/ローコード開発は簡単にできる分に独自の機能や複雑な動きには対応しづらく、複雑で大規模なシステム開発には向いていません。

また、プラットフォームに依存をしているため、プラットフォームのサービス次第でシステムが使えなくなる可能性もあります。

高機能なシステムを開発するには、やはりコーディングが必要不可欠となります。

コーディングを重視するエンジニアは、より高度で最新の技術で勝負していくようになると推測されます。

まとめ

今回はノーコード/ローコード開発について解説致しました。

世界大手の調査会社リサーチアンドマーケッツによると、2019年には100億ドルだったノーコード/ローコード開発の市場は、2030年までには1,870億ドル規模に到達すると予測しています。

参考: Low-Code Development Platform Market Research Report: By Offering, Deployment Type, Enterprise, Vertical – Global Industry Analysis and Growth Forecast to 2030 (researchandmarkets.com)

どこの会社でもIT部門関係なくシステム開発を行うようになり、エンジニアの価値を再確認するタイミングがくるかもしれません。

今後もどんどん技術は進歩していきます。新しい技術に対して後ろ向きになるのではなく積極的に取り入れることで、エンジニアとして新たな価値を生み出すことが求められています。