今回はITエンジニアから開発ディレクターへのキャリアップしたい方向けに、その方法やノウハウを現場の声を元に記事にしました。今回お話を伺ったのは元SIer出身の若手ディレクターの押田信明(仮名)さんです。
現在はフリーランスとしてご活躍されています。
ITエンジニアから開発ディレクターへチャレンジしたい方は是非ご一読ください。

■プロフィール

インタビューされる男性ディレクターの写真

氏名:押田信明(仮名)29歳男性
大学:私立 商学部
職務経歴:某SIにて地方自治体のプロジェクトに2年ほどエンジニアとして従事。後に小売のECサイトの開発に3年ほど携わる。ECサイトの開発ではプロジェクトの途中から中核メンバーとして、要件定義・PJ管理にも関与。2018年からフリーランスに転身。大手人材企業のサービスにエンジニアとして参画し、現在は開発ディレクターとして従事する。

開発ディレクションとは何か

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押田さんいつもお世話になります。今回はフリーランスになってからキャリアップされた押田さんがどのように開発ディレクターになれたのかお伺いしたいと思います。
会社によって定義も違うと思うのですが、押田さん自身が思うもしくは現在押田さんの担っている開発ディレクターの役割を、まずはお聞かせいただけますか。

押田さん押田さん

佐々木さん、いつもお世話になってます。
開発ディレクターとは、開発面とビジネス面の双方を加味したうえで、「サービスをより良くするためにどのような開発をしていくか」を考えていく仕事です。
要件定義は、先方の要求をもとにそれをシステムに落とし込んでいくことが多いですが、開発者ディレクションでは、その要求の背景にあるものはなにか、別の解決手段はないか、この開発をすることで得られるリターンはなにか、限られた工数のなかでどの開発を優先してすすめるか、といった要件定義よりさらに上流の仕事です。 事業会社側の社員が担うことも多いですが、人員体制や開発経験者が有利な土壌もあるため、フリーランスやSI会社でも担当が回ってくるケースもあります。 こうして開発ディレクションで大方針を決めたり、着手を決めた開発案件を要件定義メンバーにさらに落とし込んでもらうという形になっています。
また、全体の開発を見ている関係上、大まかな開発の状況の管理や、障害発生時のサービス影響の取りまとめ、開発以外の部署とのコミュニケーションといったものも仕事の範囲になっています。

ITエンジニアと開発ディレクターのギャップとは

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実際に開発ディレクターになられて感じたITエンジニアとディレクターとのギャップは何でしょうか。

押田さん押田さん

ひとえに目の前のプログラムを意識しているか、「サービス」を意識しているかのギャップが大きいです。
例えば、プログラムを意識していると、開発の方針を考えるときに「こういう書き方とこういう書き方があります」といった具体的な話をします。ただ、サービスという”商品”を作り上げていく上で意思決定をするにあたってはどうでもいい情報であることが多いです。 「どのように作るか」ではなく「この案で作るとユーザーの体験がこのようになる」といった、ユーザーの体験やサービスとしての品質に意識を向けなければ、開発ディレクターとしての仕事をこなすことはできません。
バグの報告1つにしても、「ここでエラーが起きているんです!」というのは開発者としては気になってしまう情報ですが、サービス影響を気にするのであれば「ここでエラーが起きているので、ユーザーは入力の途中でエラー画面に遷移してしまいます」といったユーザーレベルでの影響を語らなければいけません。 重大なバグだが、そもそもその機能での売上は微々たるものだったりと、開発者としては重大なバグであっても、サービス目線で見ると優先度の低いバグであることも多々あります。
現場で働いている方だとよく分かると思うのですが、このギャップは経験を積んでいる人でも抱えていることは多いので、このギャップを埋められるエンジニアは現場で重宝されますし、より上流の立場へのステップアップが望めます。 逆に細かいところが気になってしまう方であればディレクションではなく、技術に特化する道が向いていると思います。

開発ディレクターのやりがいとは

これフリ佐々木これフリ佐々木

押田さんの感じる開発ディレクターのやりがいとは何でしょうか。

押田さん押田さん

よくある話ですが「システムをこうして欲しい」という要望をいただいたときに、その背景や先方の業務内容を元にニーズを整理していった結果、いただいた要望よりもよりよい改修ができた時は嬉しいですね。
ユーザー側からシステムをこう変えて欲しいという具体的な要望が来ることは、先方も画面をよく触る人たちなので、よくあります。しかし、言い方は悪いですが、彼らは業務のプロであっても、システム開発のプロではないので、他にどういう手段があるのか、その改修にどれぐらいのコストがかかるのか、その改修によって他のユーザーはかえって不便になることはないかといった観点では、要望を出してくれません。 なので具体的な要望をいただいても、それを鵜呑みにはせずに、相手の背景を考えます。その結果、相手が想像していた以上に改善ができたり、コストが想定の数分の1だったりしたときにこの仕事のやりがいを感じますね。
コストが想定よりも低くなれば、空いた予算でさらに他の改善もできることになりますので、サービスを短期間でできるだけよくしていくことにも繋がります。
いろいろな関係者から開発要望をいただくなかで、要望の優先順位をつけたり、効果がないと判断した案件を却下することは非常に難しいですね。複数の部署からの要望はそれぞれが、やるべき、と考える観点が違うので、それを横並びにして比較することは難しいですし、それを他部署に納得してもらうこともまた難しいです。特に技術的な都合によってどうしてもできなかったり、できるけれど期待効果よりもコストが大きすぎるときは、具体的な理由が理解できないからこそ、納得していただくのが難しいです。技術をわかりやすく説明することのほか、常日頃から先方の業務内容や大変さに理解を示してコミュニケーションをとっているかも、納得感には影響すると思っています。
効果がないと判断した案件については、どういった調査、推定をして効果がないと判断したのかを説明するようにしています。それによって、効果的な反論が来るのであれば、それは実はやるべき開発だったというだけの話ですから、フラットにやるべきかどうかを判断すればよいと考えています。

ITエンジニアから開発ディレクターになる為の素養とスキルとは

これフリ佐々木これフリ佐々木

今ITエンジニアで、これから開発ディレクターになる為にはどのようなスキルが必要でしょうか。

押田さん押田さん

ビジネス面の知識を持ち合わせていると有利です。営業が一般的にどういった考え方で仕事しているか、よくある部署ごとの摩擦に関する感覚などは重要です。
営業の考え方というのは要するに、営業が売りに行くサービスの場合売りやすいか、わかりやすいか、あるいは競合が入ってきたときに反論しやすいかといったところです。これも踏まえて開発の方針や視点を考えると、よりよいサービスが作れるようになります。
また、いろいろな部署にいろいろな利害関係がありますから、サービスを運用している部署や問合せ窓口とったそれぞれの部署から見たときにこの開発はどう見えるのかを意識する必要もあります。もちろん開発部署の利害関係もここには大きく関わってきます。それぞれの部署から納得してもらえるような開発のプランを考えること、それができる政治的感覚を持っている人は向いています。
一般的な会計知識なども持ち合わせていると、利益率などの議論にも参加できるため、役立つと思います。あとは先程言ったように、”プログラム”ではなく”サービス”を意識して開発を考えられるかといったところですね。
開発経験はあったほうが圧倒的に有利です。開発経験がない方でもこのポジションの方はいるのですが、「この案件にどれぐらいのコストがかかるか」「この開発はリスクが高く、慎重に進める必要があるか」といった肌感覚がつかめないので、開発者たちと会話をするときの感覚の違いに戸惑っている印象です。
逆に開発経験があると、上記のことを開発案件の題名を見ただけで、なんとなくはわかりますので、それを土台にして仕事を勧めていくことができます。それから開発上のメリットデメリットとビジネス上のそれとのトレードオフを考えるときに、開発の知見がないと、開発のメリットデメリットは開発者の言われるがままにしか理解できないため、フラットに判断できないという問題もあります。

これフリ佐々木これフリ佐々木

開発経験のある方が向いていると出てきましたが、具体的にどのような開発経験してきた方が向いているんでしょうか。押田さんは実際どのような開発案件に入ってきたのでしょうか。

押田さん押田さん

プログラムを実際に書くような一般的な開発であれば、どういったものであってもある役立つと思います。ただ、システム移行だったり、インフラ方面に特化しているような業務よりも、より具体的に”サービス”(画面表示まで見たり、稼働し続けるものをつくったり)を開発してきた方のほうが、ディレクションで役立つ部分は多いと思います。
ディレクションはあくまでビジネス側と開発側を繋ぐ役割ですので、開発のなかでも深い方(インフラ、性能改善など)よりも、ビジネス側でも理解できるような領域(画面表示など)があれば十分役立つということです。もちろん、開発の深い部分を知っているほうが有利ではあります。
私は実際のところ、先ほど説明したようなフロントの簡単な開発から、サーバーサイドのプログミングを主に経験していました。いわゆるビジネスロジックを実装するようなイメージですね。 もちろん、インフラなどの知識も武器ではないものの常識程度の知識は身につけています。この知識があるかどうかも、普段のディレクション業務で、障害発生時のリスク感やインフラのトラブルがしょうがないものなのか、品質の考え方を見直さないといけないレベルのものなのかといった判断に役立っています。

どうすれば開発ディレクターになれるか

これフリ佐々木これフリ佐々木

素養・スキルに何が必要なのかわかりましたが、実際に開発ディレクターになりたいと思っても様々なハードルがあると思います。どうすればキャリアアップできるでしょうか。

押田さん押田さん

例えフリーランスでもいち企業の社員でもエンジニアとして、そのプロジェクトに関わることになるのであれば、些細な報告のときから、”サービス”を意識しておくと、開発ディレクションの枠が空いたときにチャンスがもらえると思います。
そもそもこの”サービス”を意識するという感覚は開発ディレクションだけでなく、開発者も持っていたほうがいい感覚です。ですので、開発ディレクションを目指すかどうかに関わらず、意識して仕事をしているといいと思います。 開発者同士だと、この意識を持っていることを評価してもらえたり、気づいてもらえることはあまりないのですが、事業会社側の方からすると「このひとは違う」といった感覚を持ってもらえることもあります。
私の場合は、プロジェクトの体制変更で、開発ディレクションの枠が空いたときに、お客様にご指名をいただいて今の仕事をしています。お客様側としても、いきなり開発ディレクションという調整やリーダーとしての開発方針検討を外部の人間を雇って任せるのはリスクですから、システムを知っていて、人間性もわかっている人間を据えるほうが安心なのだと思います。そういった意味でも、これまで私が意識していたことが次のキャリアにつながったと確信しています。
基本的に開発ディレクションは何人も人がいるポジションではないですし、替えもききにくいですから、契約期間の単位が長くなったり、単価が上がったりと言ったメリットもあります。

これフリ佐々木これフリ佐々木

佐田さん、インタビューをありがとうございました!

開発ディレクション案件をお探しなら

本メディアを運営する株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティングは受託開発を中心とした独立系のITコンサルティング企業です。
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