数年前から「IoT」という単語を耳にする機会が多くなってきました。また、5G(第5世代移動通信システム)の到来で、IoTはさらに加速していくことが予想されています。
本記事では、今更聞けない「IoT」がどのようなもので、今後IoTを取り巻く環境がどうなっていくか、を探りつつ、その中で活躍するIoTエンジニアはどのようなエンジニアなのか、フリーランスエンジニアがIoTエンジニアを目指す場合にその市場価値や、必要なことをお話させていただきます。

「IoT」について

IoTエンジニアについてご説明する前に、まずはIoTの意味やその機能、市場規模を説明していきたいと思います。背景を知ることで、IoTエンジニアについてより深く知ることができます。

「IoT」とは

IoTとは、「Internet of Things」の略称で、今までインターネットにつながらなかった様々なモノがつながるようになり、サーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をする仕組みのことを指します。
IoTの身近な具体例は、「スマホで明るさや・オンオフを操作できるスマートLED電球」や「スマホでドアの開閉できるスマートロック」などが挙げられます。多くの身近なIoTはスマホ1つで、簡単に制御できてしまいます。
今までインターネットにつながらなかったモノがつながることにより、家電、生活インフラ、車、スマートフォンなど身につけるモノ、病院などの施設、工場などがすべてインターネットにつながり、クラウドによってネットワーク化された世界が実現されます。
こうした世界は「スマートシティ」と呼ばれ、IoTをエネルギーや生活インフラの管理に用いることで、光熱費の節約や渋滞の解消、行政サービスの効率化を促進し、さらに経済発展効果にもつながります。

IoTを加速させる5G

2020年に入り、通信キャリア系企業のCMで「5G」という言葉を、しきりに耳にされているかと思います。
5Gとは、第5世代移動通信システムのことを言い、従来の通信規格(4Gなど)に比べて、通信距離や通信速度、通信容量が各段と進化しております。この5Gのサービスは2020年3月下旬から利用開始されており、ソフトバンクとKDDIは今後10年間で4兆円の5Gサービス展開のための設備投資を行うことが新聞等でも大きな注目を集めました。
では、5Gがどれだけ進化したのか、IoTデバイスでよく使われる「Sigfox(LPWAと総称される)」という規格、これまでのスマートフォンで主流だった「4G(LTE)」という規格と比較してみましょう。(下表)

項目Sigfox(LPWA)4G(LTE)5G
通信距離~50km~数十km1~2km以上
通信速度~100bps50Mbps~1Gbps1Gbps~50Gbps
消費電力~20mW~数百mW高い
同時接続数少ない1平方キロメートル当たり約1万台1平方キロメートル当たり約100万台
レイテンシ高い10ms(0.01秒)1ms(0.001秒)
周波数帯920MHz800MHz~2.5GHz27.5~29.5GHz、 6GHz未満(4G含む)
※参考元:図解で早わかり IoTビジネスがまるごとわかる本

5Gの通信速度は4Gと比べ最大1Gbpsから約50倍の50Gbpsへと高速化しています。さらに、5Gは同時接続数が100倍に、レイテンシの低さが10倍に向上しています。
また、Sigfox(LPWA)と総称される規格は、乾電池で数年動作するような省電力で、長距離といった特性から、水道メーターの検針や農作物の温度・水質などの管理(スマート農業)といった用途に活用されています。そうした用途なら、レイテンシの低さは大きな問題にはならないため、遅延があっても力を発揮します。これはつまり、5Gと対極の性質も持っています。
それでは、Sigfox(LPWA)や4Gと違って、5Gはどんなことができるのでしょうか。

高速・大容量

高速で大きなデータの送受信が可能になることで、様々な視点からの映像を選択できるマルチアングル視聴やVRのような臨場感のある3D映像など、大容量データの通信を必要とするストリーミング映像サービスが実現可能となります。

低遅延

通信ネットワークにおける遅延(タイムラグ)が極めて小さいリアルタイム通信によって、自動運転のような安全性が求められるようなものや、災害支援・工場などで活躍するロボットの遠隔制御、または遠隔医療などが実現可能となります。

同時接続

これまでは、自宅のパソコンやスマートフォンなど数個程度接続するだけだったのが、家庭にある数多くのデジタル家電やセンサー類までもネットワークにつながり、複数の同時接続が必要となってきました。5Gであれば、これまでの100倍もの同時接続が可能となります。
このような高速・大容量、低加速、同時接続の5Gの特徴が、今後のIoT市場を大きく発展させていくことが期待されており、先に述べたスマートシティ化の実現のために5Gは切り離せないものとなっております。
また、ハードウェア需要の高まりによって、小型で高性能な通信機器やセンサーが安価に調達できるようになったこともIoT市場が拡大する要因になっています。

IoTの市場規模

IDC Japan(2020年9月)の発表によると、国内IoT市場における2019年の支出額は約7兆250億円となっており、2024年には年間平均成長率(CAGR)が10.3%で成長し、2024年には約11兆5000憶円に達すると言われております。
主要産業分野のうち、特に製造業の割合が高いと見込まれています。これは製造業のIT化を通じて国力を高めていこうという国の政策が大きな要因になっていると考えられます。また、国内外のベンダーがスマート家電やスマートホームオートメーションといった分野で新サービスに注力していることも理由として挙げられます。
その他、今後高い成長率が期待される分野としては、農業、小売り、医療やEV設備管理といった分野が挙げられており、これまでの同一産業内での競争という構図から、様々な産業の企業が作り出す共生関係の中でIoTが活用されることが期待されております。

「IoTエンジニア」について

すべての技術にはそれを開発したエンジニアの存在があります。IoT技術であればIoTエンジニアと呼ぶのが一般的でしょう。このIoTエンジニアについてもう少し詳しい説明と、IoTエンジニアにとって必要な能力・市場価値についてお話していきます。

「IoTエンジニア」とは

IoTについて色々とお伝えしてきましたが、IoTエンジニアとはどういったエンジニアのことを指すのでしょうか。
IoTは、身の回りの様々なモノがインターネットと接続し、利用者がインターネットを介して利便性の向上や様々な情報管理できるようなることを指しております。
このIoTを実現するためには、操作や情報管理するためのソフトウェアの開発が必要なだけでなく、身の回りの様々なモノ、いわゆるデバイスを動作させるためのデバイスの設計や開発も必要になります。
もちろんインターネットに接続されるわけですから、ネットワークの構築や第三者から情報を守るためのセキュリティ対策などネットワークとセキュリティに対する知見も必要になります。
それ以外にも、キーワード的に挙げさせていただきますとビッグデータ、AI、機械学習などIoTを軸として展開されるソリューションに欠かせないものになっております。
IoTエンジニアは、今挙げたような幅広い領域に跨って知見を持ち、経験を有するエンジニアということになります。「これからIoTエンジニアになりたい!」という方々からすると、非常に高いハードルというイメージをお持ちかもしれませんが、IoTエンジニアに必要なことを紹介していきたいと思います。

IoTエンジニアに必要なこと

幅広い領域に対する知見や経験を持つエンジニアをIoTエンジニアとお伝えしてきましたが、実際市場にはそんなにスペシャルなエンジニアが溢れているわけではございません。だからこそIoTエンジニアという言葉が生まれ、その希少性が注目されているのだと思います。
先述の通り、「ソフトウェア開発」「デバイス設計開発」「ネットワーク・セキュリティ」「ビッグデータ」「AI・機械学習」など一通りのことが求められる領域ではございますが、最初からすべてを持ち合わせたエンジニアは存在しません。既にIoTエンジニアとして活躍されている人たちでも、最初は未経験から始めております。
IoTエンジニアを目指す人たちにとって最も必要なことは、好奇心と探求心、これに尽きると思います。
とはいえ、これはIoTに限った話ではないと思いますので、IoTの個々の技術要素に対して、必要なことを書き出してみたいと思います。

ソフトウェア開発

モノからデータを収集したり、収集したデータを管理するために必要なアプリケーションの開発になります。
PC側で操作するためのソフトウェアの開発だけでなく、スマートフォンなどモバイル端末側のアプリケーションの開発や連携も含まれます。言語については多様な言語が使われますし、要件定義から開発作業まで一連の流れを自走する能力が必要になります。

デバイス設計開発

モノを動作させるために必要な開発になります。一般的にはセンサーや組込系開発という言葉で表現されることが多く、C言語やC#、C++などの言語を使い、LinuxやiOS、AndroidのOSに対する知見も必要とされます。

ネットワーク・セキュリティ

インターネットと接続されることが前提となるだけでなく、従来よりもリアルタイム性のある通信や情報を扱うことが多くなります。これまでのネットワークに関する知識だけでなく、Wi-FiやBluetoothなど無線通信に関する知識も求められます。
インターネットと接続されることは、外部から常に攻撃される対象になり得るということと同義です。セキュリティについても常に意識し、最新の動向を得る必要がございます。

ビッグデータ、AI、機械学習

今後のIoTを加速させるために現時点で、最も必要とされ、最も高度とされる領域かもしれません。
現在は、取得したデータの可視化や有効活用のための様々なソリューションが次々と出てきておりますので、ビッグデータやAIに関する知見と合わせて、ソリューションを目利きする能力が重宝されることになると思われます。
必要なこととして書き出してみましたが、それ以外にもプロジェクトを俯瞰してみることのできる能力なども求められると思われます。特に上流のポジションでは複数の要素から全体を見て設計する能力、システム構成力が求められます。クライアントのビジネスはもちろんのこと、さまざまな角度からシステムを見る力が大事になります。

IoTエンジニアの市場価値

様々な領域に知見を持つIoTエンジニアの市場価値は非常に高いとされています。これまでお伝えしてきたことで、ご納得もいただけていると思いますが、ソフトウェア開発とネットワーク・セキュリティの2つに対応できるエンジニアというだけでも貴重な存在です。さらに多くの領域に対して知見をもつエンジニアであれば、そのニーズはさらに高いものになっております。年収1000万を超えるエンジニアも遠い夢ではございません。
IoT自体の市場も未だ陰りを見せることなく、順調な成長曲線を描いている中で、IoTエンジニアに対する需要は今まで以上に高まり、更に不足してくることでその市場価値は非常に高いものになると推察されます。
ご自身がIoTエンジニアを目指されるということであれば、関連資格の受験も一つの方法ではないでしょうか。
「IoT検定」「IoTシステム技術検定試験」などはご自身の価値を高める有効な手段の一つと思われます。

まとめ

最後になりますが、5Gをはじめとする通信手段の高度化、AI・機械学習の普及により、IoTに対する注目はさらに加速していきます。政府が進めるデジタル化も、IoTの推進を促すものになると思われます。必然的にIoTエンジニアに対する需要もさらに高まっていくと思われます。
IoTエンジニアを目指すフリーランスの方は、これまでのご自身の経験だけでなく、新たなスキルを身につけることも一つの選択肢としてチャレンジしていただければ、と思います。
どの領域で新たなスキルを身につけるか悩まれている、今まで培った経験も活かしたい、そのようなお悩みをお持ちの方は我々にご相談いただければ、と存じます。

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